2019-01-01から1年間の記事一覧

泰三子『ハコヅメ』

ほんとのところ、こういうモーニングがやりがちな、とある職業の大変な日常を描いて仄かな笑いと、過酷さで少しの同情を誘いつつ、ハートウォーミングなお情け頂戴で共感を煽るようなタイプの漫画って好きじゃないんですよね。それでも、Amazonレビューがそ…

吉次公介『日米安保体制史』

大体にして日米安保の歴史と言ったとき、その概念は多義的なのである。単純に安保を条約としての文言と捉えるのなら、歴史とはせいぜい成立と、改正以上の情報はありえない。しかし体制史と言うとき、恐らくそこには日米安保だけでなく、それによって成立し…

阿南友亮『中国はなぜ軍拡を続けるのか』

君塚先生と合わせて、2018年サントリー学芸賞。また慶應である。 阿南先生自体は、20世紀前半の中国の共産党と軍隊について研究されており、その内容は非常に実直で手堅い。サントリー学芸賞をとるにしても、そちらの堅い方かと思いきや、本書のような、やや…

有栖川有栖『月光ゲーム Yの悲劇 '88』

とある事情で読んだ。 新本格ブームの代表格のデビュー作。登山で出会った学生たちが、噴火で強制的にクローズドサークルに閉じ込められるなか、殺人事件に遭遇する話。 学生アリスシリーズは青春物であり、以下の書き出しのような文章を叙情的にしようとし…

レスリー・アン・ジョーンズ『フレディ・マーキュリー~孤独な道化~』

日本では十数年ぶりにクイーンが流行り、映画業界はボ・ラプの二匹目のドジョウがいないかと探しているなどと聞く。一方で当たり前の話だが、映画は多くの脚色を含む。私も観たとき、「ここ時系列おかしくない?」「え、ここなに?」なんてのが結構あり、じ…

舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる』

わからん。分からんと思ってネットで感想拾って、私がネットになれば、すなわちネットで感想書いてる鋭い読みの人と同一化できるかと思ったのだが、拾えるのがせいぜい、「セカチュー」のアンチテーゼになってる素晴らしいアイロニーだという程度で、あんた…

長沼毅『死なないやつら 極限から考える「生命とは何か」』

本書の趣旨としては、なかなか死なない生物というのがいるというところが始まりだったはずだ。つまり、有名なのがクマムシだが、ネムリユスリカの幼虫は同様にトレハロースを体内に増やすことで乾燥状態でも生きられるようになってるし、あるいは微生物(バク…

舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』

鷲崎健のヨルナイトリスナーならお馴染みだが、アイドルグループであるオッド・アイには、15年来のファンであるところの青木佑磨がラジオパーソナリティ鷲崎健に対する愛を歌った「ディスコ・ディテクティブ」という曲がある。本作と重なる部分は多いわけで…

遠藤乾『欧州複合危機 苦悶するEU、揺れる世界』

そろそろBrexitについて期限が迫ってきて、どこにどう着地させるのかが焦点が定まらない中、2016年の総選挙後に書かれた本書を読んでみると全く状況が変わってないことが分かる。 つまり欧州の統合には、根本に通貨の統合、人の移動の自由(難民問題とテロ問…

乙ひより『かわいいあなた』

Kindleで買ったはいいけど、容量の都合上、泣く泣く削除を繰り返していて、供養のために記録を残しておこうシリーズ第四段。 前エントリの長篇である水色シネマよりは、短篇集であるこちらの方が好みで、なんでかと思ったんだけど、キャラクターの性格に基づ…

乙ひより『水色シネマ』

Kindleで買ったはいいけど、容量の都合上、泣く泣く削除を繰り返していて、供養のために記録を残しておこうシリーズ第三段。 手癖で百合漫画を買い続けていた時期に購入したもので、読んだ記憶はあるのにこのために読み返すと内容が残っていなかった。 同級…