UBS銀行東京支店外国為替部『プロ投資家のための外国為替取引』

10年以上前の本ではあるが、金融業界には、定番中の定番という本がいくつかある。そして、為替だったらいまだにこれだろうと思う。 

何が優れている、というタイプの本というのではなく、またいわゆる素人向け、あるいは個人向けの証拠金取引FX向けではなく、いわゆる「プロ」のFX業務が実務ベースで描写されており、包括的に盛り込まれた本である。規制についてや、デリバに理論的に踏み込みたい、と思ったら明らかに物足りないが、一冊目としては適切。対象読者は為替業務を営む金融マンと、相対する財務担当者だろうか。財務担当者はそんな理論的な金融工学の知識は不要だろうから、この一冊で十分足りる。

 逆に、個人のFXに営む人には全く不要な一冊である。何より、相場の読み方は書いていない。いまの相場が、テクニカル的にどういう状態か、などという話はない(テクニカル分析がいったいどの程度、信頼に値するか、という別の話はあるが)。為替予約が延長されたときのディスカウント・ファクターの求め方など、為替実需のある業者しか出す必要はない。

歴史についても詳しく記述されており、IPE(国際政治経済学)の教科書の副読本としても活用できる。金利マーケットに比べて、為替の動きは、その時代の国際情勢をダイレクトに反映するようになっており、ドル円マーケットがどうしてそのように推移したか、というのは、日米の政治の軋轢や協調を知ることにも役立つ。

プロ投資家のための外国為替取引

プロ投資家のための外国為替取引