久野遥子『甘木唯子のツノと愛』

Kindleで買ったはいいけど、容量の都合上、泣く泣く削除を繰り返していて、供養のために記録を残しておこうシリーズ第一段。

作者の久野遥子というひとは、岩井俊二の「ロトスコープアニメーションディレクター」を務めたのが名を売った仕事らしく、いわゆるアニメーターというよりもアニメーション作家と、漫画家を生業としている。これが漫画として抜群に面白いですか、と言われると、よく分からない。これは短編集であるが、いずれの作品も同じ作者なので空気感が似ているといえば当然で、唐突な場面展開の早さとかの映画的という感じもありつつ、基本のコンセプトはいずれも、愛し合う、あるいは信頼し合う二人が出てくるのだけど、そこには青春時代における何らかの共犯関係が描かれているところが共通している。それは表題作の、ツノと愛というタイトルが示していて、ツノが生えている妹と、居なくなった母に悪態をつく兄、そういう兄を分かってあげる妹、実はツノという突起とは兄の男根なのかもしれないとか、ユニコーンを象徴させていて、巧いというべきか、でもたくさんの要素を詰め込むがために場面が多すぎて、話の流れがぶつ切りだと思うか、悩むべきところである。たとえばツノが消える場面のうちで、妹が帽子を飛ばされるシーンについて、箒を持っていて掃除のためにそこにいるんだろうと推察されるんだけど、それを前置きなく一コマだけで場面展開したことにする。これが空気感を出していると言えば出している。

甘木唯子のツノと愛 (ビームコミックス)

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