田渕直也『入門実践金融 証券化のすべて』

特別に語るべくもないというのが正直なところで、それはこういった入門書においては十分な誉め言葉として捉えてもらいたいのだが、それよりも田渕直也というひとは、デリバティブ関連の実務家向け入門書を書いている印象が強かったものだから、証券化についても書くというのは意外だと思う一方、マーケット業務を担当していて証券化商品を運用商品として売るか買うかするというのは当然の選択肢の一つとして上がってこようものと思われるし、その一環でデリバも証券化も両方とも分かるというのは違和感はないのだが、少なくとも領域が違うことは確かであり、両方とも入門書の域を出ないのでまぁ書けると言えば書けるか、と納得はするし、包括的に体系立てて説明してくれるのは新鮮な驚きもあってありがたいのだけれど、もう少し技術的、専門的な話はどこまで書けるのだろうか、などと感じて経歴を見ると長銀三菱UFJ投信でマーケット商品の開発をずっとやってきたとあるので、金融工学的から鑑みたバリューの計算方法とか、より現代的なデリバセールスマンの実態とか、実際の運用サイドの目線の話は苦手そうだなぁと思わなくもないのであるが、とは言え、そういった部分は往々にして文章には出てこないもので、密教的に、そこに属する人間にのみ継承されていくため、仕方ないと言えば仕方ないのだ。

(特に意味もなく一息で書いてみた)

 

入門実践金融 証券化のすべて

入門実践金融 証券化のすべて