オノ・ナツメ『ACCA』

 ついにACCAが終わってしまった。オノ・ナツメ作品に通底する、男キャラのエロス。よく出ていたと思う。あまり武士のほうはその価値を分かってあげられないが(さらい屋とか、、、)、西洋の、鼻の高い男性キャラは何とも言えないのじゃーと涎を垂らしていた。またロッタも可愛い。で、これがマッドハウスで、夏目真悟監督でアニメ化されるということで、随分と期待させられたのだけど、感想としてはアニメについては正直エロスが足りなかった…。顔についている、極端に大きくて横に広がった目が、人間の目になってしまっていたのだ。その意味でアニメで描かれていたのは、人間ジーン・オータスだった。リストランテ・パラディーゾとかもそうなんだけど、生活が描かれていてなお、生活感を微塵も感じさせない非人間的な振る舞いこそが魅力だったんだなーと思わせてくれる。我らの愛するガイジンは、あるいは武士は、人間であってはいけなかったのだ。顔つきも見ると爬虫類に思えてくる。

治安維持を司るACCA局員、ジーン・オータスは、知らぬ間にクーデター計画に巻き込まれていき、どんどん中心に据えられていくのだが、本人は至って無関心で受動的。だから彼が何を考えているか分からないし、そういう点が人間的ではない。タバコを屋上や広場で喫むジーンは、遠くをぼんやりと見ており、目の焦点が合っていない。一方で彼はよくタバコを喫む場面をよく目撃されており、彼は常に「見られる」対象である。彼を中心にシステムが作動しており、そのなかでブラックボックスのジーンは、様々な刺激を受け流す。ロボットだろうか。

タバコはライトモティーフのように象徴的に描かれるが、何かの記号か、と言われると、やや悩ましい。「もらいタバコのジーン」だけあって贈与(マルセル・モース)と返礼のシステムが存在していて、そこに社会が成立する。一方で、視察した先で受け取ったタバコを吸っておらず、贈与のシステムから考えて、ラストのクーデターへの対処が既に予感させられる。即ち、ラストのジーンを見ると、非人間的なジーンというのは、いやいや能動的ではないか、と思えるかもしれない。が、ネタバレにもなるから踏み込まないが、もっと現状打破的な着地点もあったはずで、やっぱりまだ受動的だと思うのだ。トップが阿呆なことに変わりはないではないか。とは言え、多くの漫画で秩序を変革するシーンは少ないので、時代か、メディアの要請なのかもしれない。しかし、タバコを「吸う」という行為に何の意味があるのか、は、、、何だろうね?