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杉本浩一、福島良治、若林公子『スワップ取引のすべて』

私が元々持っていたのは第4版だったが、残念ながら最近第5版が出たとのこと。そこで、買い直してみたところ、割かし修正点は多かったので、概ね満足である。

デリバの世界では、大概スワップから勉強しましょうという古いセオリーがあるらしいものの、スワップについて勉強しましょうとなると、選択肢はほぼ無い。先日、為替はUBSのが定番だと紹介したが、スワップならばコレが定番かつ決定版だろう。

確かに、デリバティブとは交換(スワップ)こそが肝というのは商品構造上、そうだろう。いわゆる金利スワップに始まり、為替も複数通貨の交換であるし(スポット為替のバイセルでは不要だが)、為替予約をすればフォワードポイントを導くために両方の通貨の金利が重要になる(予約は金商法上のデリバではないが…)。

ましてやデリバを組むときにはスワップという考え方は逃れえない。いわゆる悪名だかき為替デリバは商品構造上、2国金利差(やボラティリティ)がプライスの肝になる。あるいは仕組預金だって、短期金利スワップレートが関わる。スワップを無視して、商品を作れないのだ。本書はスワップの基本であるディスカウントファクターの求め方、からの先スタートのレートの求め方に始まり、オプションまで含めたリスク管理、規制、経理まで概観してくれる稀少な書籍である。

 

さて本書は、初版が1992年。日本のデリバ黎明期に、その開発を牽引した長銀出身者が執筆しており、いまだにアップデートを繰り返す名著の一だ。5版へのアップデートについては、リーマンショック以降の規制への対応が中心であるかのように喧伝されているが、修正はそれだけで留まらず、(私の記憶違いで無ければ、という留保付きではあるけれど…)一章でスワップの基礎と言える概念についての簡単な解説が追加されていて、これはかなりありがたいのではないか。ISDA Master読めよ、と言われてしまうかもしれないが、day countについてとか、案外日本語での解説は世の中に少ない(そもそも最新版のISDA Masterはネットで無料で拾えたりしないのだ)。4版の頃より、全体的に無味乾燥な感じは減退していて、読みやすさが向上している。もちろん、規制についてのアップデートも多く、CCPや諸々の担保金、バーゼル規制等々、実務家の頭を悩ます問題も最新の情報が入っている。

ただ、アップデートされてまだ古さは残るなぁ、と思うのは、例示の部分。これはもう、長銀がリッチョーとかワリチョーとか売ってた名残なのか、運用商品の説明が多く、レートはいまの現実離れしている。それよりも現場的には違う商品例が見たいんじゃ、と思わなくもない。ま、これはこれで、見たことない商品を学ぶチャンスとも捉えられるのか。

 

スワップ取引のすべて(第5版)

スワップ取引のすべて(第5版)