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鷲崎健『成すも成さぬもないのだが これまでのこれからも』

ファンとして紹介しておきたい。アニメ声優のラジオのパーソナリティ、イベントのMCとして、ある狭い界隈では有名人の鷲崎健初のエッセイ。

10年来のファンとしては、聞いたことある話も多いが、テンポ感が良く、立て板に水の文体は読んでいて心地良い。月一掲載のアニカンのコラムから不思議な喋り口調の書きぶりだと感じていたが、この文章は落語家のエッセイに近い。この人の歌詞は、譜割りが複雑で歌いにくいと評判だが、しかし一方でうまく歌えれば口当たりがかなり気持ちいい、というのを意識してい歌詞を書いているらしく、それは文章でもあっても同じで、読んでいて喋りたくなる。

『成すも成さぬもないのだが』というタイトルはかなりセンスが良い(どこかの文章に書いた言葉を編集が拾ってきたらしい)。それは、肩肘を張って、色んなことを成そうとするのでなく、気の向くまま、フラフラと生きようと決めた鷲崎さんの生き方がうまく表されていると思える。中身は、自己紹介的な文章が多く、ファン向けだと思える部分も多い(当然である)が、「富士山、巨人、レディー・ガガ」は中々に強烈で、三題噺と称して三つをお題に、ひたすら支離滅裂な文章が続く。最後、ほとんどオチずに終わるという点で残念ではあるが、それでもフラフラと、アクロバティックに話が展開していく感じは、イベントMCで場をまとめる鷲崎さんとは違い、ソロでやっているラジオで「俺、なんの話してる?」とフリートークで迷子になるときの、自由人・鷲崎健、が顔を見せている。