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AL『心の中の色紙』

ここ一年、個人的に最もよく聞いている邦楽ロックは、andymoriだったりする。黒沢ともよ(声優)のラジオを聞いていて、ちょこっと話題にのぼっただけではあったけど、試聴してみたところ予想外に良くて、それから一年間ひたすら聴き倒している。
小山田壮平は、珍しく、古いタイプの強烈なカリスマ的存在だと思う。ドラッグでやられて奇行を繰り返す不安定なロックスターとは、随分懐かしい在り方である。また決して上手い人ではない。歌い方も。曲作りも。やや高音で、音程は不安定で、曲作りはごりごりロックバンドというよりも、日本に伝統的な、フォークとポップスが融合したロックとでも言えばよいか。
何よりも特徴的なのは歌詞だ。歌詞はだいたいパターン化してしまっている。いつも使うフレーズというのがあって、everything's gonna be alrightとか、頻繁に口をつく言葉がある。言ってしまえば、ひたすら自己模倣を繰り返す。ファンは大概、歌詞の意味が分からないことに喜んでいるようにすら見える。ほとんど一曲通じて歌詞に意味はないのかもしれない。それでも歌詞の力が強くて、意味のとれない単語をサビに合わせて連呼して、結果として頭にこびりつく。小山田壮平の感じている不安は、そのあたりにあるのかもしれない。

「1984 花に囲まれて生まれた

疑うことばかり覚えたのは戦争映画の見過ぎか

親たちが追いかけた白人たちがロックスターを追いかけた

か弱い僕もきっとその後に続いたんだ」

andymoriの名盤「1984」のオープニング曲、「ファンファーレと熱狂」にて小山田が歌い上げたこの詩は、もしかしたら、模倣的でフィクショナルな自分の在り方に漠としてきたのかもしれない。

その小山田も1984年生まれだから既に30歳を超えている。ALはandymori解散後、andymori初期メンバー+小山田の友達で構成されたプロジェクトである。andymori時代から徐々に音楽性に角が取れてきていたが、ALには安定感が見られる。そもそもツインボーカルなので、小山田は実質半分しか歌ってない。その代わり、強烈で、頭に残る、そしてかつ意味の分からないワードは少ない。友達が隣にいて、心が落ち着いているのかもしれない。何だよ、そんなに不安定なフリして友達いるのかよ、ずるい。

 

心の中の色紙

心の中の色紙