カプースチン 自作自演集『8つの演奏会用エチュード』

あまり、ジャズに造詣が深いわけではないが、クラシック好きからすると、有名なジャズ作品。(と言っても、私はそこまでクラシックマニアではないけど)

カプースチンウクライナホルリフカ出身で、モスクワでクラシックの正統的な教育を受けた人物である。ロシアでジャズ、というのは非常に違和感のあるフレーズに聞こえる。 ジャズと言えば、アメリカ黒人音楽がルーツの音楽で、20世紀のロシア、当時のソビエト連邦はクラシックの正統的な教育が非常に熱心な国家だったことを考えると、接点は無さそうである。(しかし、ロシアでクラシックの専門教育が始まったのは19世紀後半であり、他のヨーロッパ諸国よりも遅い)

では、カプースチンはどうやってジャズを知りえたのか。それは彼が、ヴォイスオブアメリカ(VOA)による放送を学生時代に聞いたことによるらしい(1950年代?)。冷戦をVOA(プロパガンダを目的とした、アメリカ発信のラジオである)などを通じた文化浸透から分析しようというアプローチは、最近ではちょこちょこ出てきている。いわゆるソーシャル・デタントとして、つまり冷戦の緊張緩和は市民どうしの交流を受けた、「下」からの運動が重要だったという議論であるが、VOAを聞いてカプースチンみたいな人物が出てきたというのを聞くと、どこまでデタントに役立ったかどうかはさておき、全く効果が無かったわけではないのかもしれない、などと、ちょっと見直した。

ともあれ、カプースチンは、ろくにジャズの勉強もしてはいない中、ラジオ音源だけを元に、ジャズを構築した。おそるべき執念だと思う。いわゆるジャズ、というよりも、クラシカルな構築感は強い。アドリブはなく、全て記譜されており、インプロヴィゼーションには興味もないらしい。

ただ、使っている和声や、リズムの取り方はクラシックではない。ジャズでも、名ジャズピアニストによる、あの枯れた、スウィングするリズムの感じというよりも、とにかくハイテンションで、音数が多く、聞いてて気持ちのいいタイプ。

たぶん、古いジャズよりも、最近のジャズピアノを聞いているひとの方がむしろ受け入れやすいと思うのだけど、いかがだろうか?

 

日本へは、東大ピアノの会が紹介したことから火が点いた、というのが専ら言われている。アムランを紹介したのも彼らだったが、アムランがカプースチンを弾いていることとは関係があるのだろうか。

と思って検索していたら、こんなものが。

Kapustin "Eight Concert Etudes For Piano" Op.40 楽譜入手エピソード

ペトロフが切っ掛けだったのか。知人から楽譜を入手してもらい、そして、その後、アムランからアルベニスカプースチンの楽譜を入手。なるほど、こうやって繋がるのか。こういう行動力がある人は凄い。

 

自作自演集「8つの演奏会用エチュード」

自作自演集「8つの演奏会用エチュード」