鷲崎健『成すも成さぬもないのだが これまでのこれからも』

ファンとして紹介しておきたい。アニメ声優のラジオのパーソナリティ、イベントのMCとして、ある狭い界隈では有名人の鷲崎健初のエッセイ。 10年来のファンとしては、聞いたことある話も多いが、テンポ感が良く、立て板に水の文体は読んでいて心地良い。月一…

UBS銀行東京支店外国為替部『プロ投資家のための外国為替取引』

10年以上前の本ではあるが、金融業界には、定番中の定番という本がいくつかある。そして、為替だったらいまだにこれだろうと思う。 何が優れている、というタイプの本というのではなく、またいわゆる素人向け、あるいは個人向けの証拠金取引FX向けではなく、…

細谷雄一『安保論争』

専門家が自分の専門領域について語るよりも、案外他所の領域について語った方が分かりやすかったりすることが間々ある。 正直言って、細谷先生が外交について論じるなかで、ここまでイマイチだったのは初めてかと思う。ベストは博論を書籍化した『戦後国際秩…

AL『心の中の色紙』

ここ一年、個人的に最もよく聞いている邦楽ロックは、andymoriだったりする。黒沢ともよ(声優)のラジオを聞いていて、ちょこっと話題にのぼっただけではあったけど、試聴してみたところ予想外に良くて、それから一年間ひたすら聴き倒している。小山田壮平は…

『アステイオン』84号

雑誌業界は、衰退の一途を辿っているとは言え、まだまだ世の中にはとてつもない数の雑誌が出回っている。バカみたいに種類があるのにも関わらず、そして興味のある向きは多いにも関わらず、国際政治について手厚くカバーされた雑誌は思いの外、少ない。イデ…

ティモシー・ガートン・アッシュ『ダンシング・ウィズ・ヒストリー』

英国がEUを脱退した。 珍しく、今を時めく話題から始めてみたが、様々なしたり顔の論者が既に紙面を己の筆で彩っていることだろうから、私から言えることなどほぼ無い。しかしながら、この問題は、TGA(Timothy Garton Ash)がやや語っていた話ではあったの…

筒井康隆『ビアンカ・オーバースタディ』

4年ほど前、ライトノベル界とSF界、文学界が騒然となった。「筒井康隆御大がライトノベルを書くらしい」。 しかし、よくよく振り返ってみれば、そう違和感のあることでもない。ヤングアダルト向け(ライトノベルの昔の呼称と言って差し支えないと思う)とい…

O・A・ウェスタッド『グローバル冷戦史 第三世界への介入と現代世界の形成』

ブクログに書いていたけど、もうブクログを使っていないので、こちらにそのまま輸入した。 世の中に「アメリカは嫌いだ」という日本人は思いの外たくさんいるよう見受けられるが、一体全体どういう訳かと訊くとそれはあたかも陰謀論めいていることがままある…

石川文康『カント入門』

世の中に、カントの新書は意外や少ない。カントという名前の知名度はおそらく哲学者の中でもトップクラスかと思われるが、でも、では実際にどういうことを言った人なのか知っている人も、同じく少ないのだろう。 本書は、著名なカント研究者(だった)石川文…

カズオ・イシグロ『日の名残り』

古き良きイギリス、というのが時代の陰に退く中、社会を動かしてきたイギリス人に仕えていた、伝統と格式を備えた執事は、新たにその邸宅を購入したアメリカ人に傅く。そんな時代が本作の舞台である。 E.H.カーは、『新しい社会』(岩波新書)の中で、「今日…

カプースチン 自作自演集『8つの演奏会用エチュード』

あまり、ジャズに造詣が深いわけではないが、クラシック好きからすると、有名なジャズ作品。(と言っても、私はそこまでクラシックマニアではないけど) カプースチンはウクライナのホルリフカ出身で、モスクワでクラシックの正統的な教育を受けた人物である…

池内紀『カール・クラウス』

池内紀という人の書くものは大概面白い。ドイツ文学まわりではピカイチだろう。その池内紀による若書きの著であり、「大学を出てから二年ほどして」「「教授資格取得の」ために」書いたものだそう。しかし、カール・クラウスという名前は、思想まわりを勉強…

新井英樹 『RIN』

世の中に、高尚な漫画読みが好きな漫画家というのがいる。 近づきたくない世界だが、確かに存在していて、ユリイカに特集されてしまったり、インテリ有名人が読んでます宣言していたり、オサレ雑誌に載っていたりする、ああいうあれのことだ。 新井英樹もそ…

Yefim Bronfman Plays Prokofiev Concertos and Sonatas

ブロンフマンの手による、プロコフィエフのピアノソナタ全集、ピアノ協奏曲全集のボックス。 イェフィム・ブロンフマンと言えば、ロシア系イスラエル人ピアニストであり、そのスケールの大きさと正確無比な演奏は、ヴィルトゥオーゾの多い現代においても評判…

ドン・デリーロ『コズモポリス』

自称・金融クラスタでもあるので、であれば一度読んでおこうと思って目を通したデリーロ『コズモポリス』。初デリーロ。ポール・オースターなんかと並んで(というのは、デリーロが『リバイアサン』でオースターに献辞しているから)、偉大なる現代アメリカ…

方針

このブログの今後の方針。 本を読んだり、CDを聴いたりしたときの備忘録用にします。