文学

舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる』

わからん。分からんと思ってネットで感想拾って、私がネットになれば、すなわちネットで感想書いてる鋭い読みの人と同一化できるかと思ったのだが、拾えるのがせいぜい、「セカチュー」のアンチテーゼになってる素晴らしいアイロニーだという程度で、あんた…

舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』

鷲崎健のヨルナイトリスナーならお馴染みだが、アイドルグループであるオッド・アイには、15年来のファンであるところの青木佑磨がラジオパーソナリティ鷲崎健に対する愛を歌った「ディスコ・ディテクティブ」という曲がある。本作と重なる部分は多いわけで…

坂上秋成『TYPE-MOONの軌跡』

みんな大好き、TYPE-MOONのこれまでの歴史をまとめた本。とても簡単にまとめられており、Wiki +α程度の情報量が収められている。情緒不安定な奈須きのこが、武内崇ほか、様々な周りの大人にプッシュされてスターダムまで駆け上がっていく様子が描かれる一方…

J.D.サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』

ミスター・アントリーニに話したエピソード、主人公があることを話すのに対して、話がわき道に逸れると、「わき道!」と指摘する授業があって、それが厭で落第したが、とは言え、一貫性のない話は厭だ、という主張があって、本書における手法はそれに近い気…

現代小説クロニクル 2000~2004

良いシリーズだと思う。講談社文芸文庫は短篇のアンソロジーを定期的に出していて、この現代小説クロニクルは、そのなかの一環として5年区切りで名作短篇が集められている。 5年というスパンはかなり短い。純文学は時代を映し出すことも多いが、5年では時代…

遠藤周作『沈黙』

遠藤周作という作家は、文章の巧みな人だなぁというのが第一の感想だった。皆さんご存知の通り、江戸時代に入り、キリスト教は迫害された。宣教師ロドリゴ一行は、信仰に篤い宣教師フェレイラが日本で棄教したと聞き、その真偽を求めて日本は長崎に向かう。 …

西田谷洋『ファンタジーのイデオロギー 現代日本アニメ研究』

新海誠が流行っている内に本書は紹介しておきたい。正確には、新海誠がというよりも、「君の名は」が流行っているというのが適切だろうが、それでも新海誠作品が社会現象にまでなるというのは驚きだった。秒速5センチメートルは、明らかに普段アニメを見ない…

佐藤亜紀『1809─ナポレオン暗殺』

タイトルの通り、ナポレオンを暗殺しようとするウストリツキ公爵に巻き込まれた、仏軍工兵隊パスキ大尉の話ではあったが、一方で暗殺に関する話ではない。公爵と接触してしまったために、警察や、公爵の愛人等々と関係を持つことになってしまい、いくつかの…

筒井康隆『ビアンカ・オーバースタディ』

4年ほど前、ライトノベル界とSF界、文学界が騒然となった。「筒井康隆御大がライトノベルを書くらしい」。 しかし、よくよく振り返ってみれば、そう違和感のあることでもない。ヤングアダルト向け(ライトノベルの昔の呼称と言って差し支えないと思う)とい…

カズオ・イシグロ『日の名残り』

古き良きイギリス、というのが時代の陰に退く中、社会を動かしてきたイギリス人に仕えていた、伝統と格式を備えた執事は、新たにその邸宅を購入したアメリカ人に傅く。そんな時代が本作の舞台である。 E.H.カーは、『新しい社会』(岩波新書)の中で、「今日…

ドン・デリーロ『コズモポリス』

自称・金融クラスタでもあるので、であれば一度読んでおこうと思って目を通したデリーロ『コズモポリス』。初デリーロ。ポール・オースターなんかと並んで(というのは、デリーロが『リバイアサン』でオースターに献辞しているから)、偉大なる現代アメリカ…